武田薬品が開発中の『ラサギリンメシル酸塩』が、ウェアリング・オフが出現している進行期レボドパ投与中の日本人パーキンソン病患者対象の臨床第Ⅲ相試験を終え、厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。
恐らく申請は認められるだろうと思われますが(※あくまでも私個人の意見ですが…認められて欲しい!)、この新薬にはどのような効果があるのでしょうか?
★その事に関する記事がこちらです。⇒クリック
新医薬品に係る承認審査の標準的タイムラインは?
承認申請が2017年6月。私たちパーキンソン病患者が“申請中の新薬”を使えるようになるのはいつ頃なのでしょうか?
「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)」によると、審査の経過上、特別問題のなかった場合は平成26年度以降に申請された医薬品に対して“申請受付”から“承認”まで12ヶ月を目標にしているとのことです。※これは通常品目の場合。優先品目に対する目標は9ヶ月。
ということは、スムーズに審査が通れば来年の6月頃には『ラサギリンメシル酸塩』の製造販売が承認されるかもしれないのです。
❖「PMDA」の承認審査業務とは?
医療現場で使用する医薬品、医療機器、再生医療等製品や、日常生活で使用する一般用医薬品・要指導医薬品、医薬部外品について、品目ごとに品質、有効性、安全性の審査を行っています。
《承認審査業務》
●提出された申請資料の内容が倫理的かつ科学的に信頼できるかを調査する「信頼性調査」
●信頼性調査の結果で、申請された製品の効果や副作用、品質について審査を行う「承認審査」
●申請された製品を製造できる能力を有するかも調査対象となります。
製薬会社は臨床試験を始める前から、「PMDA」による“治験相談”という審査を受けるのだそうです。製薬会社が手数料を支払い、総合機構の助言を受けます。料金は治験前で600万円、第Ⅲ相終了時までさまざまな相談区分があり、試験が無事に終われば、収集したデータを整えて、厚生労働省に承認申請できます。
申請時も、製薬会社は審査手数料として3000万程度が必要となるそうで、ここまでの段階で1億円近くを「PMDA」に支払うことになるのだそうです。ただ、人の命に関わる業務ですから、製造側にも調査側にも必要な経費なのでしょう。
新薬が申請できるところまでも長いプロセスがあります。マウスやラットなどの動物を用いて行なう「前臨床試験」。自由意志に基づいて参加を希望した健康な成人に対して、薬効・安全性・副作用を調べるのが、「第Ⅰ相試験(フェーズⅠ)」。※抗がん剤の場合は、がん患者を対象にします。
「第Ⅱ相試験」ではさらに、同意を得た軽度な患者さんに対して、主に対象疾患や病状、適切な用法や用量を調査する“前期試験”と、数百人程度の患者さんに対して、主に有効率と副作用を調査する“後期試験”に分けられます。
「第Ⅲ相試験」ともなると、数百例~1万人規模と大掛かりな試験を実施することが多く、莫大な費用が必要となります。この段階で有効性が見出せず、開発中止となると、製薬企業の損失は大きく、第三相のリスク軽減のため、他企業との共同開発に踏み切るケースもあるようです。
そして武田薬品が、ついに『ラサギリンメシル酸塩』の販売承認申請にこぎつけました!
『ラサギリンメシル酸塩』は、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.(本社:イスラエル ペタハ・ティクバ)が開発し、欧州や米国をはじめとする世界55ヵ国で既に承認されているパーキンソン病治療薬です。日本においては、武田薬品が2014年3月末に「Teva社」と開発・販売に関する契約を締結したのです。
ラサギリンメシル酸塩は、非可逆的特異的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害活性を有する抗パーキンソン病薬です。MAO-Bに非可逆的に結合することにより、脳内のドーパミンの分解を抑制し、シナプス間隙中のドーパミン濃度を高めます。その結果として、パーキンソン病の症状に有効な効果をもたらすとのことです。
現段階での『ラサギリンメシル酸塩』の効果とは?
武田薬品の要望書によると、販売名は『アレジクト』となっています。ラサジリンは、既に販売されているエフピーと同じ“MAO-B 阻害剤”なのですが、覚醒剤原料に該当しないとのことです。ということは、薬剤管理面では非常に利便性が高くなります。
★エフピーの管理に関する記事はこちらです。⇒クリック
パーキンソン病対象患者404人をプラセボ群、ラサギリン投与0.5mg群、ラサギリン投与1mg群に分けて、それぞれ1日1回投与しました。
◆主要評価項目:ベースラインからの1日当たり平均オフ時間の変化量
●プラセボ群→0.51時間減
●ラサギリン投与0.5mg群→1.11時間減(約2倍の減)
●ラサギリン投与1mg群→1.35時間減(約3倍の減)
◆プラセボとは?
私達の体には、とても不思議な一面があって、乳糖やでんぷんなど、“薬”としての効き目がないはずのもので錠剤やカプセル剤をつくり、頭痛の患者に本物の“薬”として服用してもらう実験をすると、何と約半数もの人が治ってしまうことがあるそうです。“薬(と言われたもの)”を飲んだという安心感が、体にひそむ治癒力を引き出すのかもしれません。
これを「プラセボ効果」といいます。けれど、プラセボは薬の替わりにはなりません。それは、プラセボを利用した臨床試験で分かります。
臨床試験において治験薬の効果を調べる場合、その治験薬が今までにないタイプの新薬であれば、比較すべき適当な対照薬がないことがあります。そうした場合には、外観や味を治験薬とまったく同じにしたプラセボをつくり、比較試験を行います。
その際に、やはりプラセボでもある程度の効き目がみられる可能性があります。そこで治験薬が、プラセボと比較してはっきりと上回る効き目があって、初めて“薬”として認められるのです。
まとめ
『ラサギリンメシル酸塩』が、臨床第Ⅲ相試験で1日当たりの平均オフ時間を有意に改善したとの発表は、日本での販売承認にグンと近づいた感じですよね。改善がみられたと共に安全性も確認されたとのことです。
ラサギリンは、『MAO-B阻害活性を有する抗パーキンソン病薬』ということで、エフピーと似ています。けれど、同じような効果が期待できる薬でも患者によって“合う”、“合わない”があるのが、パーキンソン病の困ったところ。実は、私はエフピーが合いませんでした。全然平気な人が多いのに…と悲しかったです。
ですから、効果・効能が似た別の薬が承認されれば「選択肢」が増えるわけです。もしかしたら、その薬なら副作用が出ないかもしれません。オフの時間が減る‼その効果は、パーキンソン病患者だけが分かる大きな改善です。承認販売の日が待ち遠しいです。
そして武田薬品は、2016年パーキンソン病に対するカプセル化細胞治療薬の共同研究契約を、米バイオベンチャーのNsGene社と締結したとも発表しています。まだ詳細は明らかではないようですが、パーキンソン病の治療に関してはアメリカ、欧州のスピードに日本は遅れ気味のように思われます。
海外との共同研究で、ラグを解消してもらいたいと願っています。
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