パーキンソン病の明るい未来は、直ぐそこまで来ているのでしょうか?シンポジウム参加(後編)

パーキンソンン病の治療の展望

私が子どもの頃と言えば、約半世紀前になります。その頃“細胞”や“遺伝子”や“再生”という言葉は、SF映画の中の世界。SFってよく使いますが何の略?SFとは、サイエンス・フィクションのこと。じゃあ、サイエンスフィクションは?

サイエンス・フィクション( Science Fiction)は、科学的な空想にもとづいたフィクションの総称。フィクションて何?となると対の言葉に“ノンフィクション”がありますね。ノンフィクションにはもととなるなる事実が存在します。ということは”フィクション”とは事実、現実に無いものを想像して創り上げたもの!ということになるでしょうか?

話しが『iPS細胞』からそれてしまいましたが、半世紀前までは考えられなかったことが、今起きようとしてしているのでしょうか?30年前に、誰が“スマホ”を想像したでしょう?100年前の人が“新幹線”を見たらどう思うでしょう?

今では、有って当たり前、誰でもが簡単に手に入るものがホンの数代前の人達には想像だにできないものばかりだった…。医療の世界も何年か何十年か先には『パーキンソン病ですね、お薬を処方しておきますので薬局で受け取ってください。また2週間ほどしたら検査をしてみますから』なんて事になってたりして。

山中教授が語った『iPS細胞』の名前の由来!

 

iPS細胞の略さない名称は、滅多にお目にかかることはありません。こんなに有名に(世界的に!)なっているのに知りませんでした。

iPS細胞は「induced pluripotent stem cell」というのが正式名称だそうです。“induced”は、人工的に誘導したという意味。“pluripotent”は、複数の+能力があるとなりますね。“stem cell”は幹細胞です。日本では「人工多能性幹細胞」と呼ばれます。

お恥ずかしいことに、私はiPS細胞の名付け親が山中教授だとは知りませんでした。講演の中で、名前を付ける時にES細胞を意識されたそうです。胚性幹細胞であるES細胞は「 embryonic stem cells」です。

IPSという良い名前が決まったのですが、教授曰く「二文字に(ES細胞が二文字なので)」にこだわりたかった、というようなことを言われていたと記憶してます。そこで思いついたのが、“iPad”だったそうです。最初を小文字にすることで、なんとなく二文字感がでたとのことですが…。

本当でしょうか?アップル社からは特にクレームは来てませんとのことです。※このエピソードは有名みたいですね!知らなかったのは私だけ?

また、話をiPS細胞にもどします。前回の記事で奈良先端科学技術大学院大学の助教授として就任し3人の優秀な学生も入学と研究の環境が整い、20年はかかると言われていたiPS細胞を6年で発見。山中教授が論文を出したのが2007年。

助教授として奈良に赴任したのが1999年ですから驚くべきスピードと言えるのではないでしょうか?
そして2004年に京都大学再生医科学研究所教授を経て、現職である「京都大学iPS研究所長・教授」。
2012年、まだ記憶に新しい(これは、自分がパーキンソン病患者だからでしょうが…)、ジョン・ガードン博士とノーベル生理学・医学賞受賞の栄冠に!

今回のパーキンソン病患者への治験とは?

 

25日に神戸で行われたシンポジウムでは、今年行われる予定の『iPS細胞』を使った治験の具体的な方法などは語られなかったように思います。以下は、私が調べてみて“こうではないか?”の範囲です。決して確定したものではありません。

今回の治験は、iPS細胞が発見、発表されてから10年、患者側にとっても医療関係者側にとって“まさに固唾を飲む”という表現がピッタリなのではないでしょうか?

2014年には、理化学研究所などがiPS細胞から作製した網膜細胞の移植を行いました。いよいよ2018年8月から待ちに待った“パーキンソン病患者”への治験が始まります。

パーキン病患者なら誰でも知っていることですが、この病気は神経伝達物質のドーパミンが不足することで、脳からの指令がうまく伝わらなくなります。その上厄介なことに進行性。本来なら、ドーパミンは大脳の線条体というところで、脳のさまざまな部分との連絡役として働いてくれはずなのです。

私は、てっきり今回の治験では“根治”を前提にしているものと勘違いをしていました。そして、もっと大きな勘違いはiPS細胞は、ダメになった臓器や神経を元の健康な臓器に作り変えたり、新しくその部分が再生するのだと思っていたのです。もしかしたら、そんな日が来るかもしれませんが…。

今回、高橋教授が目指すのは細胞移植によってどの程度改善されるか!と、いうところにあるようです。

『iPS細胞』の特徴である“体のあらゆる細胞になれる”、“どんどん増える”を利用するのです。

まずヒトの皮膚や血液の細胞からiPS細胞を作ります。

『iPS細胞』からドーパミンを作る神経細胞を作り、約500万個を患者の脳の中に移植します。
※方法としては、頭蓋骨に穴をあけ注射する手術を行うとのこと。
※過去の研究で、脳に移植した細胞は10年は生着する(中には薬が不要になった人も!)と報告されているそうです。

シンポジウム最後のパネルディスカッションのでの質問で「実用化はいつ頃ですか?」という問いに対する教授の10~15年でしょうという言葉に、一瞬“やっぱりか~”と肩を落としました。

それには理由があるのです。もしも、細胞移植が実用化されたとして、その治療を受けるのは、早くても私は70歳を過ぎ、病気も進行しているでしょう。※新薬の開発もありますから一概には言えませんが…。

今回の移植手術が例え実用化されても、対象者は“ドーパミンに対する反応が残っている人”でなければ効果は期待できないのです。10~15年という時間は、今罹患したばかりの患者でも重症化されている場合が想定されます。

まして、今既に進行期に入っている私など間に合うはずもない…つい、投げやりな気持ちになってしまいました。

まとめ

 

確かに、iPS細胞から神経細胞を再生する技術が、僅か10年ほどで治験にまで漕ぎ着けたことは、私たちパーキンソン病患者にとって大きな福音であることには間違いはありません。

ただ、実用化を語る前に治験で安全性や効果を確かめるという段階です。再生医療は、確かに素晴らしい!いつの日か、傷ついたり、機能を失った臓器や神経が医療によって生まれ変わる日が来るかもしれません。

けれど現時点では、その日が来るまで一日でも長く“移植の対象者”であり続けることが大切です。そのためにも、新薬開発やデバイス治療の改善にも力を注いで欲しいと願います。

何と2日かかってここまでです。次回、よく出てくる理化学研究所について触れてみたいと思います。

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