パーキンソン病を始め錐体外路性疾患の臨床と研究を推進する『MDSJ』ってご存知ですか?

パーキンソンン病の治療の展望

私たちパーキンソン病などの神経疾患の「学会」で一番先に頭に浮かぶのは『日本神経学会』ではないでしょうか?ある時、ふと目にした資料に『MDSJ』の文字が!何だろうと思って見てみると、それは日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(Movement Disorder Society of Jakan:MDSJ)のことでした。

神経疾患に関する研究をしている学会ってどういうの?なんていう軽い感じでホームページを見てみました。その中で、特に私が興味を持ったのが“PDナース研修会”というものです。なかなか、神経内科(脳神経内科)の医師も少ないなか、パーキンソン病について詳しい知識を持ったナースさんは、もっと少ないのでは?と思うこともあります。※これは、あくまでも私個人の意見です。

今回は、日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(Movement Disorder Society of Jakan:MDSJ)についてと、その学会での“PDナース研修会”について触れてみたいと思います。

以前、書いた記事で要介護3のパーキンソン病の男性が小銭がないのでタクシーを呼んで欲しいと病院のナースに頼んだところ、規則ですからと断られ真冬の中3㎞先のホームに徒歩で帰る途中に亡くなってしまうという悲劇もありました。

確かに、規則は規則です。ひとつ許せば歯止めが利かなくなるのも納得できますが、要介護3のパーキンソン病患者が、どのような状態なのか想像できないというところに日本の医療の問題が有るような気がします。特に希少難病の場合、ナースさんは、その病気の患者さんに接する機会も少ないかもしれません。

けれど、私たち患者にとってナースさんは、先生とまた違った意味で頼れる存在なのです。“PDナース研修会”という文字に、釘付けになってしまいました。

日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)とは?

MDSJの設立は、2001年5月。Presidentは、神経変性疾患、中枢性運動障害が専門の柳澤信夫先生。会の目的は、パーキンソン病を始め錐体外路性疾患の臨床と研究を推進すること。設立当初は、神経学会の最終日の夕方、海外から演者を招いて講演会を開き、会員相互の情報交換と親睦を目的としていたようです。
※ちなみにMovement Disorderとは、運動障害を意味します。

ところが、パーキンソン病は、アルツハイマー病についで頻度の高い疾患であるにもかかわらず、いまだ根本的治療がありません。そして、近年では社会的関心も極めて高く、研究の進展も極めて早い領域です。

MDSJでは、神経学会の最終日のみの情報交換だけで、時代のニーズに対応することは困難ではないかとの考えから2007年からは独立した年次集会を開催するようになったとのことです。

【2017年11月からの学会役員組織】

代表:髙橋 良輔
総務: 望月 秀樹
財務: 村田 美穂
前代表: 宇川 義一
次期代表: 服部 信孝
次期総務: 織茂 智之
次期財務: 花島 律子
パーキンソン病患者なら、誰でもが知っている先生方のお名前が並んでいます。

MDSJでは、教育研修会も行われています!


この教育研修会は2010年から始まっています。医師、コメディカル、その他の医療関係者を対象に、パーキンソン病についての知識を深めてもらうための研修会ですね。スケージュールなどが掲載されています。一般参加もできるようですが、凄く面白そうで、参加できる場所なら是非行ってみたいです。下記は、2017年のものです。

会 期:2017年3月11日(土)9:00 ~ 17:35
会 場:砂防会館(東京都千代田区平河町2-7-4)
募集人数:定員450名(定員に達した場合は参加申し込みを終了させていただきます)
参加費(昼食代込み):医師6,000円、医師以外の医療従事者・研究者4,000円、一般 10,000円※この一般は誰でも参加できるのでしょうか?会場は毎年変わるようです。

テーマ「パーキンソン病 200年分を一日で学ぶ」
9:00-9:05 開会のあいさつ
織茂 智之(関東中央病院神経内科)
座長:山本 光利(高松神経内科クリニック)
9:05-9:35 パーキンソン病の歴史とガイドライン2017概括
服部 信孝(順天堂大学脳神経内科)
9:35-10:05 パーキンソン病の発症・進展機序
高橋 良輔(京都大学神経内科)
10:05-10:30 パーキンソン病の運動症状とその発症機序
花島 律子(北里大学医学部神経内科)
10:30-10:45 休憩
座長:野元 正弘(愛媛大学薬物療法・神経内科)
10:45-11:15 パーキンソン病の非運動症状1
高橋 一司(埼玉医科大学神経内科)
11:15-11:45 パーキンソン病の非運動症状2
柏原 健一(岡山旭東病院神経内科)
11:45-12:15 パーキンソン病の画像診断
渡辺 宏久(名古屋大学脳とこころの研究センター)
座長:織茂 智之(関東中央病院神経内科)
12:15-13:15 パーキンソン病の新しい診断基準と鑑別診断
武田 篤(国立病院機構仙台西多賀病院)
13:15-13:45 休憩
座長:久野 貞子(京都四条病院神経内科)
13:45-14:15 パーキンソン病と類縁疾患の神経病理
長谷川 一子(国立病院機構相模原病院神経内科)
14:15-14:45 パーキンソン病の初期治療
吉井 文均(済生会平塚医療福祉センター)
14:45-15:15 パーキンソン病の進行期の治療
村田 美穂(国立精神・神経医療研究センター病院)
15:15-15:30 休憩
座長:宇川 義一(福島県立医大神経内科)
15:30-16:00 パーキンソン病の非運動症状の治療と運動症状の新しい薬物治療
富山 誠彦(青森県立中央病院神経内科)
16:00-16:30 パーキンソン病の外科的治療(DBS)
藤本 健一(自治医大ステーション・ブレインクリニック)
16:30-17:00 パーキンソン病のリハビリテーション
市川 忠(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
17:00-17:30 パーキンソン病の再生医療(iPS細胞など)
高橋 淳(京都大学iPS細胞研究所(CiRA))
17:30-17:35 終了の挨拶
渡辺 宏久(名古屋大学脳とこころの研究センター)
★凄い内容ですよね!1日中は大変かもしれないけれど、行ってみたいです。HPを見てみると2018年の会場は名古屋でした。

そしてPDナース研修とは?


2016年の8月に第1回 PDナース研修会が行われ、直近の第5回までの内容を見てみたいと思います。

第1回目の参加の呼びかけには、PDナース研修の必要性や英国では既にPDナースが活躍していることなどが書かれています。
第1回目のスケジュールです。
13:00-13:05 開会挨拶
宇川 義一(日本パーキンソン病・運動障害疾患学会 代表)
(福島県立医科大学医学部神経内科 教授)
13:05-13:15 PDナースの現状と未来
村田 美穂(国立精神・神経医療研究センター 病院長)
13:15-14:00 パーキンソン病とは
高橋 一司(埼玉医科大学神経内科教授)
14:00-14:45 パーキンソン病の症状
織茂 智之(関東中央病院神経内科部長)
14:45-15:15 休憩
15:15-16:15 パーキンソン病の治療(共催セミナー:アッヴィ合同会社)
花島 律子(北里大学神経内科准教授)
16:15-16:45 パーキンソン病のリハビリテーション
小林 庸子
(国立精神・神経医療研究センター病院リハビリ科医長)
16:45-17:15 パーキンソン病の看護
三好智佳子(国立精神・神経医療研究センター病院看護師

ナース研修には、内容によって時間が2パターンあるようです。第2回は、午前中から行われています。
第2回目のスケジュールです。
10:00-10:05 開会挨拶
柏原 健一(岡山旭東病院)
座長:坪井 義夫(福岡大学神経内科)
10:05-10:25 パーキンソン病の概念とPDナースの意義
宇川 義一(福島県立医大神経内科)
10:25-10:55 パーキンソン病の診断と運動症状
山本 光利(高松神経内科クリニック)
10:55-11:25 パーキンソン病の非運動症状
柏原 健一(岡山旭東病院神経内科)
11:25-11:40 休憩
11:40-12:40 ランチョンセミナー
座長:野元 正弘(愛媛大学薬物療法・神経内科)
パーキンソン病の治療
斎木 英資(北野病院神経内科)
12:40-13:00 休憩
座長:北山 通雄(岡山旭東病院神経内科)
13:00-13:30 パーキンソン病のリハビリテーション
田中 義人(岡山リハビリテーション病院)
13:30-14:00 パーキンソン病の看護
谷口 恵子(岡山大学病院看護部)
14:00-14:15 休憩
座長:武森 美枝子(倉敷平成病院看護部)
14:15-15:00 事例検討1:転倒予防
症例提示:岩谷 歩美(北野病院)
指定質問:小寺 里美(岡山旭東病院看護部)
15:00-15:45 事例検討2:精神症状対応
症例提示:渡邊 慎一(岡山旭東病院)
指定質問:山本 澄子(福岡大学病院脳神経センター)
座長:谷口 恵子(岡山大学病院看護部)
15:45-16:30 事例検討3:退院調整
症例提示:田上 仁美(岡山旭東病院)
指定質問:鈴木 美穂(岡山県難病医療連絡協議会)

この第2回目の参加の呼びかけは、パーキンソン病(PD)は、高齢化も影響し患者数が増加している疾患で、医療従事者に求められる要素は多様化しています。診療科も神経内科、リハビリテーション科、脳神経外科、整形外科、呼吸器科、消化器科、総合診療科、救急部など、様々です。

患者さんに直接対応する機会の多い看護師がその病態、治療を理解し、対応を心得ておくことは極めて重要です。というような内容でした。本当にその通りだと思います。上記のスケジュールを見るだけでも、私たちPD患者に対応してくださるナースの皆さんには頭の下がる思いです。

まとめ


パーキンソン病をはじめ“難病”と呼ばれる病気は、ひとつの診療科だけでは、なかなか病状が改善しません。患者、ひとりひとりのツラいところや痛いところも違います。

日本でも、神経疾患に精通したナースさんが増えてくださることを祈りつつ、このような学会の活動が広がっていくことを期待したいと思います。

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