『Muse細胞製品CL2020』の探索的臨床試験が開始!パーキンソン病には応用できないの?

パーキンソンン病の治療の展望

『Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cell)』は、2010年に東北大学の出澤真理教授らのグループが発見。ヒトの多様な細胞に分化する能力持つ“新たなタイプの多能性幹細胞”だそうです。再生医療という文字を見るとパーキンソン病には使えないの?と期待してしまいます。

『Muse(ミューズ)細胞』は、生体内の間葉系組織内に存在する自然の幹細胞。腫瘍化のリスクも少なく、目的とする細胞に分化誘導する必要がなく、そのまま静脈内に投与するだけで傷害部位に集積し、そこに生着して組織を修復するというのが特長!って、凄いですよね。

今回の対象疾患は「急性心筋梗塞」ですが、2012年11月に“ iPS細胞以外の新しいアプローチ”として『Muse細胞』と『ダイレクトリプログラミング』が紹介されています。そのあたり調べていきたいと思います。

 

今回、『Muse細胞製品』の探索的臨床試験開始を発表したのは、株式会社生命科学インスティテュート(本社:東京都)。岐阜大学医学部附属病院他の施設で開始するそうです。
※探索的臨床試験は、トランスレーショナル リサーチ(translational research)、
「橋渡し研究」とも呼ばれるそうです。病気のメカニズム等の基礎研究を基に開発した医療手段を臨床応用する初期の臨床試験を主に指すようですが、研究者により定義はまちまちとのこと…。医薬品、細胞療法、遺伝子治療、核酸医療、再生療法等治療手段が多岐に渡るのが特徴。

『Muse細胞』とは?

❖生体に内在する新しいタイプの多能性幹細胞

『Muse細胞』は、主に骨髄、皮膚、脂肪などの間葉系組織に存在し、また様々な臓器の結合組織にも内在する上、市販の間葉系の培養細胞からも得られ、非常にアクセスしやすいそうです。

1細胞から体中の様々なタイプの細胞に分化が可能で、自己複製能も持っている。そして一番特筆すべきは、体内に自然に存在する細胞なので、腫瘍化のリスクが極めて低いという点でしょうか?また増殖力も強いようです。

東北大学では、成人ヒトの皮膚や骨髄などの間葉系組織から多能性幹細胞を同定することに成功。この細胞が『Muse細胞』と命名されたのです。多能性を備えながら腫瘍性が無いので“再生医療”への応用が期待されているのですね!

これだけでも『Muse細胞』って凄い!思いますが、最大の利点は他にあったのです。それは、そのまま血中に投与するだけで組織修復をしてくれる!点なのです。安全性と簡便性を併せ持っているわけです!

 

『iPS細胞』以外の新しいアプローチ

 

2012年時点の記事なのですが、『iPS細胞』を実用化するためにはクリアしなければいけない問題点が挙げられていました。直ぐに思いつくのが、『iPS細胞』の移植後の“がん化の可能性”ですね。

そして、移植医療に利用するには、『iPS細胞』から“適切な種類の細胞に分化させる”必要があるということ。受精卵から体が作られていく過程で、細胞分裂を繰り返しながら発生段階に応じて様々な遺伝子が働き、神経系になる細胞、消化管になる細胞、というように「細胞の運命」が決められて行くそうです。

『iPS細胞』から移植のための細胞を作るには、人為的に細胞の運命を操作することが必要になるわけですが、この2012年の時点で『iPS細胞』とは別の解決策も模索され始めていたのです。

その時、別の解決策として紹介されていたのが『Muse細胞』と、ダイレクトリプログラミングでした。『Muse細胞』の発見は、出澤教授が細胞培養操作を間違えたことから…と言われています。

シャーレで培養している細胞に対するタンパク質分解酵素による処理を、規定を大きく超える時間放置してしまったそうです。ほとんどの細胞は死に絶えてしまったけれど、その中でも、ごくわずかに生き残った細胞こそが、ストレス耐性のある『Muse細胞』だったそうです。

すでに『Muse細胞』は、iPS細胞のように外部からの遺伝子導入の必要がない、そしてがん化しにくいことから、再生医療への応用が期待されていたのですね。

『ダイレクトリプログラミング』は、皮膚の細胞から神経や血球へと、「iPS細胞を介さずにダイレクト(直接)に転換する」という技術!私は、恥ずかしながら初めて知りました。

2010年にスタンフォード大学の研究グループが初めて報告しています。マウスを使った実験で、皮膚から神経へと細胞が変化することを発見したとのことです。

『iPS細胞』が発見される前は、このような細胞の転換は不可能だろうと考えられていたそうです。けれど、山中教授がわずか4つの遺伝子導入によって万能細胞を作れることを示したことが、“細胞の運命は変えることができる”という認識を世界中の研究者にもたらしたということです。

やはり『iPS細胞』の登場は、とてつもなく大きなものだったのですね!新しい医療の可能性が次々と生まれてくることに期待が膨らみます。

 

 

『Muse細胞』は、神経疾患の治療にもつながるのでしょうか?


東北大学では、心筋梗塞、肝疾患、脳梗塞、神経損傷、糖尿病、感覚器障害など様々な疾患をターゲットとした再生医療への応用に向けて研究が続いているようです。

中枢神経系には多種の神経前駆細胞が存在するとのこと。前駆細胞とは、幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞のことです。

代表的な例が神経幹細胞なのだそうですが、神経幹細胞以外の前駆細胞の生体内での動態というのは、いまだ研究が進んでいない状態のようです。現在、それら前駆細胞の正常および損傷時における性質や動態について解析を行い、解明を目指し研究が進められているのです。

そして、これらの知見を集積し、真の目的である内在性神経前駆細胞の賦活化(物質の機能・作用を活発化すること。)による神経疾患治療法の開発につなげたいとのこと!ハッキリ言って難しすぎて、私たち神経疾患患者にどう作用するのか、どのような角度から治療法が開発されるのか?は簡単に理解できるものではありません。

けれど、薬だけではなく、再生医療にも選択肢が増えていくことは、パーキンソン病など治療法の確立していない難病患者にとっては朗報に他なりません。ただ、まだ臨床段階ですが…。

また、『パーキンソン病の間葉系由来グリア細胞移植にによる画期的な治療法開発』の研究成果報告書の中で、間葉系細胞内に存在する多能性幹細胞『Muse細胞』をラットに移植する方針に変更し、パーキンソン病の移植治療研究を継続する、という一文がありました。頑張って欲しいです!

 

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