パーキンソン病に『MRガイド下集束超音波』は有効?将来、治療の選択肢のひとつとなるでしょうか?

パーキンソンン病の治療の展望

“本態性振戦”は、開頭せず治療ができるようになったとのこと!それが『MRガイド下集束超音波』という機器を使った治療だそうです!切らない治療…夢のようですが、パーキンソン病には使用できません。

というのも、その治療法がパーキンソン病に有効かどうかの承認がおりていないのです。また、この治療機器を導入している施設は、日本で現在5施設だそうです。

医療機器(medical devices)は、疾病の診断、治療、予防などに使用され、身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等のことを指します。何だか、分かったような、分からないような感じかもしれません!また、機械器具=開頭手術をイメージしてしまうような…。

今回は、パーキンソン病に応用できるのか?という点は未定ですが、日進月歩の医療を感じさせる『MRガイド下集束超音波』という機器を使った治療について書いていきたいと思います。

 

本態性振戦とは?

 

まず、『本態性』というのは「原因がはっきりとしない」という意味。そして『振戦』とは、「自分の意志とは関係なく起きてしまう規則正しいふるえ」のことです。

自分の意思とは関係なく手や足がふるえてしまう!アレッ?!それってパーキンソン病じゃないの?やはりパーキンソン病と誤診されることは少なからずあるようです。65歳以上の5人に1人は本態性振戦があるそうですから、症例としては多いですね。

本態性振戦は、手に現れることが一番多いようで、足や頭部、声に症状の出ることもある疾患ですが、生命を脅かすものではないとのことただ、本態性振戦によって運転や通勤などの簡単な日常生活が困難になることもあり、孤立感に悩む患者が多い…その辺りはパーキンソン病患者にも言えることですね。

本態性振戦は大きく2種類に分けられます。何かを持ち上げようとした時などにおこる“動作時振戦”、遠くにある物を取ろうとして手を伸ばした時におこる“姿勢振戦”です。そしてほとんどの患者が両方の振戦を訴えるそうです。

❖原因は?

本態性振戦は小脳、視床、脳幹などの脳の特定エリア間での伝達異常によって出現するといわれています。本態性振戦の原因は不明です。遺伝が原因(家族歴)で生じるケースもあるようです。

❖特徴は?

●ジッとしている時よりも、文字を書くなどの動作時や、特定の姿勢をとった時に現れます。
●年齢とともにふるえがひどくなって歩けなくなったりすることはないようです。
●手足の他、頭や声のふるえなども出現します。

❖パーキンソン病のふるえとの違いは?

ふるえが起こる部位
*本態性振戦:手、頭、声
*パーキンソン病:手、足

 ふるえの特徴
*本態性振戦:動作時、特定の姿勢を取ったときに出現。
*パーキンソン病:安静にしているときに出現。⇐ここが、大きな違いですね!

症状
*本態性振戦:ふるえのみ
*パーキンソン病:ふるえ、筋固縮、動作緩慢、歩行困難

所持困難
*本態性振戦:線が流れるなど大きく乱れる。
*パーキンソン病:文字が次第に小さくなってくる。

本態性振戦の治療方法

 

『本態性振戦』もパーキンソン病同様に、薬物療法から始め、効果が得られなかったら、手術療法などへと進んでいきます。高齢者の場合は合併症や副作用などを考慮したうえで治療を選択します。

薬物療法ではβ遮断薬や抗不安薬が使用されますが、効果が不十分な場合にデバイス療法(手術療法を選択肢として加えていくようです。この辺りの流れはパーキンソン病も同じですね!

主な手術療法としては、高周波凝固術、脳深部刺激療法(DBS) 、定位放射線療法、そして集束超音波療法です。この中で集束超音波療法だけが開頭せずに治療を行えるのです。

❖集束超音波療法とは?

1本1本の微弱な超音波を束にして一点集中させ標的組織に照射します。一点集中で超音波を照射することで、標的組織を熱(50~60℃)で破壊させます。

放射線の被曝がないため、何度でも治療が受けられのは大きなメリットですね!治療はMRI画像を撮影しながら行うため、ピンポイントで正確な位置に照射することができ、照射中の温度変化を細かく確認することができます。

治療に要する時間は3~6時間。開頭や全身麻酔の必要がなく、症状が改善していくのを確認しながら治療を進めていくことが可能だそうです。なんと2泊3日で、治療後はすぐに日常生活に復帰できるというのも凄いですよね。

 

まとめ

パーキンソン病の治療の中心は“薬物療法”です。ただ、長くレポドパなどパーキンソン治療薬を使用していると薬が効いている時間、効いていない時間が出てきます(“ウェアリング・オフ現象”)。また、手足がくねくねと勝手に動いてしまう“ジスキネジア”と呼ばれる運動合併症が起こる場合があります。

次の選択肢として、本態性振戦同様に『デバイス治療』を考えていきます。脳深部刺激療法(DBS)、胃ろうを造り薬液を16時間持続的に流すduodopa療法(デュオドーパ)などです。近年、デバイス療法は”Last Hope((最後の神頼み的な治療)”とは考えず、健康寿命の充実のための1つの治療手段ととらえる傾向にあるようです。

そして朗報がまたひとつ!神奈川県の病院において2017年9月『MRガイド下集束超音波治療』の臨床研究で、振戦優位型のパーキンソン病患者さんを治療、症状の軽快を認めた!という報告が入りました。振戦優位型のパーキンソン病患者を同装置で治療したのは日本初だそうです。※本態性振戦には自由診療が始まっています。

薬も手術も、私たちパーキンソン病患者にとって“選択肢が増える”ことは何事にも代えがたい情報です。臨床研究が無事進み、切らずに済む『デバイス療法』の確立が一日でも早く承認される事を願っています。

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