抗体医薬の開発が『次世代パーキンソン病治療薬』となるのでしょうか?!

パーキンソンン病の治療の展望

今、次世代のパーキンソン病治療薬となる可能性があるのでは?と注目を集めているのが『抗体医薬』の開発です。もし実現すればパーキンソン病の進行を“より遅らせることができる”のではないか?と言われています。

私たちパーキンソン病患者に対する根本的な治療方法は、未だ見つかっていません。そして何より、恐怖であり、不安であるのが、止めることのできない“症状の進行”なのです。

今回は、実用化の目標を5年後としている『抗体医学』の開発について、書いていきたいと思います。

 

 

 

現状のパーキンソン病の治療法は?

もう、これはパーキンソン病患者なら“耳にタコ”ですよね!今のところ『薬物療法』が中心です。ただ、パーキンソン病は治療経過において、患者それぞれに違った症状が出現することがあります。治療開始当初は、劇的にレポドパの効果が現れる場合が多く、うまく症状をコントロールすることができます(ハネムーン期と呼ばれます)。

ところが、3~5年が経過した辺りから、薬が効かなくなるわけではないものの、効果が長続きせずに3~4時間おきに服薬しないと動きづらくなってしまう(ウェアリング・オフ状態)や、薬が効きすぎて、体がクネクネと自分の意思とは別に動いてしまう(ジスキネジア)といった“運動合併症”が生じることがあります。

薬の調整などでは“オフ”や“ジスキネジア”に対応できなくなった場合は、脳深部刺激療法(DBS)、脳凝固術外科的治療法が治療の選択肢でしたが、2016年の9月からは「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液( デュオドーパ)※」という新しい治療法も加わりました。

※胃ろうを造設し、空腸までチューブを挿入します。そのチューブに体外式のポンプをつなぎ、レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に投与するデバイス補助療法です。一定速度で薬を投与し続けることが可能となるためオフ症状の改善、ジスキネジアの発現を抑えることができます。

そして、今も新しい治療法が開発され続けているのです。
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次世代パーキンソン病治療薬の可能性を秘めた『抗体医薬』とは?

 

《抗体とは何?》

抗体は、特定の異物にある抗原(目印) に結合して、その異物を体内から除去する分子です。抗体は免疫グロブリンというタンパク質!異物が体内に入るとその異物にある抗原と特異的に結合する抗体を作り、異物を排除するように働いてくれるのです。

《抗体医薬品とその特徴は?》

抗体医薬品は、その抗体の働きを利用した医薬品。抗体医薬品は、目印となる抗原をピンポイントでねらい撃ちするため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できるそうです。抗体医薬品の特徴は、従来の医薬品に比べ、薬剤の標的がはっきりしていること、しかも副作用が少なく治療効果が期待できるところと言えそうです。

『次世代パーキンソン治療薬』は日本、カナダ、フランスのグループが共同で行うもので、日本では順天堂大学の服部信孝教授らのグループが中心となり、企業の協力も得ながら開発が進められます。

上記で書いたようにターゲットが決まっています‼パーキンソン病の発症や進行に関わるタンパク質である“αシヌクレイン”です。“αシヌクレイン”をターゲットに、5年後の実用化を目指し「抗体医薬」の開発を進めるとのこと。

実現すればパーキンソン病の進行をより遅らせることができる可能性があるというから、また期待してしまいます。

これもパーキンソン病患者には「耳タコ」ですが、パーキンソン病は脳幹に属する中脳の黒質と、大脳の大脳基底核にある線条体という部分に異常が起きる神経疾患です。黒質から線条体に向かう情報伝達経路が働かなくなるために、姿勢の維持や運動の調整がスムーズにできなくなります。

既に、パーキンソン病治療薬は、レポドパ、ドパミン受容体刺激薬、抗コリン薬、ドパミン放出促進薬などがあり、さらに新薬の開発・申請も進んでいます。

けれど、『抗体医薬』の開発は、もう一歩進んだ治療法のようです。服部教授らのグループは、フランスやカナダのグループと共同で、患者のスクリーニングを行った上で開発を始め、日本の医療機関にも参加を呼び掛け、企業の協力も得る予定だそうです。※医学におけるスクリーニングとは、ターゲットとなる集団に対して実施する共通検査によって、目標疾患の罹患を疑われる対象者あるいは発症が予測される対象者をその集団の中から選別すること。

パーキンソン病の進行阻止の鍵は?

パーキンソン病の発症や進行には、“αシヌクレイン”の凝集やミスフォールディングが関わっていると考えられています。フォールディングとは『折り紙』という意味だそうです。

蛋白質は本来アミノ酸が直線状につながった高分子の“ひも”で、そのひもは折りたたまれることで特定の立体構造を形成して、機能を果たします。蛋白質の折りたたみには、折り紙と似たイメージがあるそうです。ミスフォールディングとは、その折りたたみに異常が発生するということでしょうか?

そして、服部教授たちは、αシヌクレインの広がりを抑え、凝集を取り除く作用や、αシヌクレインの伝播をブロックする作用を持った『抗体医薬』の開発を目指します。

パーキンソン病治療で期待されるのが、再発予防や進行抑制効果のある薬剤である『Disease Modifying Therapy (DMT)』。理想的な治療法として考えられているようです。

そして、DMTの鍵を握っているのがαシヌクレインの制御であり、αシヌクレインをターゲットにした「抗体医薬」が開発されれば、進行をより遅くできる可能性があるというのが、研究チームの目指す『次世代パーキンソン治療薬』ではないでしょうか↗↗

 

まとめ

いろいろと新薬の開発や新しい外科手術法への取り組み、遺伝子治療、iPS細胞などパーキンソン病の治療は、まさに日進月歩と言ったところでしょうか!私たち患者にとっては喜ばしい限りです。実用化が待ち遠しいですね。

また、アイルランドProthena社、パーキンソン病用抗体のフェーズIで脳内移行などを確認。疾患修飾作用を評価するフェーズIIへ(2016.11.1)

Prothena社は2016年11月、スイスRoche社と共同開発中の抗αシヌクレイン抗体PRX002(RG7935)のフェーズIbの結果を発表。パーキンソン病患者への投与で安全性、薬物動態、および薬力学的効果を確認したことから、2017年にもフェーズIIを開始するとのこと。

英AstraZeneca社は2017年8月、武田薬品工業とパーキンソン病を対象とする抗αシヌクレイン抗体を共同開発・販売する契約に合意したと発表。MEDI1341は同年末までにはフェーズIを開始する予定で、ニーズの高いパーキンソン病薬の承認取得に向けて臨床開発を加速する。など世界も動き出しています‼

 

コメント

  1. チビタ より:

    初めまして
    私はPD患者でなく、多系統萎縮症(MSA)診断後1年9か月目患者です。川西市在住50歳です。PDでなくて恐縮です。病気は異なりますがMSAはアルファイヌクレインが100%検出され、いずれはパーキンソニズム(幸いにて、私だけがまだ発症してませんが、小脳症状と自律神経障害が先に出ており、あと半年歩けるかわかりません)が出てくる運命にて、足搔けるのも今のうちしか無いと思っています。不幸自慢をするつもりは無いですがそのくらい進行は速いです。
    幾つかの記事を拝見し、よく勉強されてる(medi1341の武田
    の話なんて語れる人は史上2人目です。私は書字困難で文字も書けないので見るだけになろうかと思いますが)なと思い、また高齢者が多いPD環境にありモチベーションを高く保たれてることに敬服しますし、とても嬉しいです。

    キーボードを打つのにミスも多く時間もかかりますがよろしくおねがいします。
    武田薬品の海外子会社は豪州PRANA社PBT434で胃腸薬(おそらく便秘薬)で提携しました。ラサギリンといい今年武田はPDに対して本気を感じています。PBT434はαシヌクイレイン標的で2018年半ばに1相治験開始予定だそうです。

    脱線しましたが順天堂の話、幾ら潜っても情報が出てこないので服部教授に直に訊かないと不明にて年が明けたら上京しようと思います。
    MSAの世界では服部先生のことわかりません、また関西で講演会が予定されることがあれば教えて下さいね。杖でも必ず行きます。

    • コメントありがとうございます。私のつたないブログを読んでいただき感謝いたします。今、リハビリから帰ってきました。好発年齢とは言うものの、最初通所リハビリに通い始めた時は、なぜ私がここにお年寄り(私も決して若くない…)と並んで座っているのだろう?とボンヤリとあらぬ方を眺めていたことを思い出しました。

      普通に動くってどんな感じだったろう?なんて…今は忘れてしまいました。PDの4大症状だけの日は『普通の日』になってしまいました。プラス何か別の症状が出てます。今は“浮腫み”です。原因は分かりません。足の先に“何か別のもの”が付いているみたいです。明日、また主治医と今後の治療方針を相談してブログにまとめようと思っています。

      多系統萎縮症のことは、症状など調べたことがあります。本当に一日も早い、神経疾患の治験・臨床が始まることを願っています。モチベーションが高いと言ってくださって嬉しいです。

      崩れ落ちそうになる気持ちをどうコントロールして良いのか分からなくなる時の方が、多いです。こうして何かを発信することで、自分を奮い立たせているのだと思います。

      『PD友の会』の会報で医療講演会があればお知らせします。今日は元気をもらえました。ありがとうございます。

  2. チビタ より:

    すいません。
    正しくはアルファシヌクレインと書きたかったのです(誤字脱字は病気のせいとご勘案ください)

  3. チビタ より:

    すいません。
    メールを頂いたのに、私の不注意で無くしてしまいました。
    十分気をつけますので今回は再送をよろしくお願いします。
    本当にすいません。メール自体は無事に到着しておりました。

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