パーキンソン病の治療の未来は?日本の研究環境の悪化に懸念の声が!

パーキンソンン病の治療の展望

2012年に山中教授が『iPS細胞』の一連の研究で、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことは、あまりにも有名!優秀な研究者が海外へと出ていく中で、日本で研究を続けている山中教授には頭が下がる思いです。でも、日本が騒ぐのは“成功”した後。研究段階で投資しなければ、研究者にも患者にも“未来”がないのでは…考えすぎでしょうか?

10年前の2007年11月20日、京都大学・山中伸弥教授のグループが米国科学誌に発表した論文、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)開発成功のニュースが世界を驚かせました。それも知る人ぞ知る!だったかもしれません。日本は、直前まで興味すら示さなかった事に対して、それが誰もが知っている権威ある賞を取ると、突然“狂喜乱舞”という表現がピッタリなほどの取材攻め‼

何だか、虚しい気持ちになります。ノーベル賞受賞者も日本の研究環境に危機感を抱いているようです。

今までも、『iPS細胞』を用いた、一日でも早い根治治療実用化への期待を込めて記事を書いてきました。

『iPS細胞』に関する記事はこちらです。⇒クリック①

★『iPS細胞』に関する記事です。こちらもどうぞ⇒クリック②

一日でも早い『iPS細胞』を用いた治療の実用化を待ち望む、私たち難病患者と国との“温度差”。そして、寄付を募りながら研究に邁進する「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)」の現状を書いていきたいと思います。


オリンピックにしても、それまで見向きもしなかった競技がメダルを取ると、驚くほどのスピードで取材攻め!○○ジャパンだの、ペアの苗字の1文字ずつをとった愛称をつけたりと…少し大人げない。

権威ある賞に弱いのは国民性なのでしょうか?

 

 

近年ノーベル賞を受賞した日本人は?


●2017年

*ノーベル文学賞
石黒 一雄…国籍はイギリス

*ノーベル平和賞
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン):団体受賞
※日本のNGO(ピースボート他)7団体参加

●2016年
*ノーベル医学生理学賞
大隅良典…オートファジーの解明

●2015年
*ノーベル医学生理学賞
大村智…寄生虫による感染症の治療法の発見
*ノーベル物理学賞
梶田隆章…素粒子のひとつニュートリノについて

●2014年
*ノーベル物理学賞
赤崎勇・天野浩・中村修二(国籍はUSA)…青色発光ダイオード

●2012年
*ノーベル医学生理学賞
山中伸弥…iPS細胞の作製に成功

今、このままでは日本の研究者がノーベル賞(特に“医学・生理学”、“物理学”分野)を取れなくなる時代が来るのでは?との強い懸念の声が挙がっているとのことです。

ノーベル医学・生理学賞の受賞者、大隅良典さんは、日本の研究環境の悪化という「強い危機感」を訴えました。そして、同じくノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんも「残念ながら、日本が科学技術で、優れた国であるとは、もはやいえないのではないか」と強い懸念を示しています。

2000年以降、世界の国々で科学技術の重要性が強く認識され多くの国で科学技術予算を増やしました。ところが、日本の大学などの研究現場では、論文の数を左右する“研究者の数”、“研究時間”、“研究者の予算”の3つの要素がいずれも減っているのです。特に減少が顕著なのが研究時間だと言われています。

今の相次ぐノーベル賞受賞は、1980年代~90年代の研究が評価されているのです。ということは2000年以降研究環境が急激に悪化している現状を考えると、この先、ノーベル賞が出ないかも…という危機感は強くなりそうです。

実際に若くして東京大学の助教になった研究者が、その実態を語っています。実験機器の管理や大学の運営、教育などで時間が取られ、自分の研究時間は“1割にも満たない”というのです。

全国の国立大学に国から配分される運営費交付金は、法人化された平成16年からの13年間で1445億円が削減。これは、配分額が多い東京大学と京都大学を足した額に匹敵します。

いま大隅さんは国だけに頼っていては問題は解決しないとして、研究環境が悪化している若手の研究者を少しでも応援するためノーベル賞の賞金と同じ1億円を拠出して研究費を支援する財団を設立するなど活動を続けているそうです。何故個人が!?一体、日本はどうなってしまうのでしょう?!

 

京都大学『iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)』とは?

国立大学法人 京都大学iPS細胞研究所「英名:Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University CiRA(サイラ)」は、2010年4月設置。所長は山中伸弥教授です。

《2030年までの目標》

①iPS細胞ストックを柱とした再生医療の普及
② iPS細胞による個別化医薬の実現と難病の創薬
③ iPS細胞を利用した新たな生命科学と医療の開拓
④ 日本最高レベルの研究支援体制と研究環境の整備
これは、パーキンソン病患者としては、絶対実現してもらいたい目標ですね‼それもできるだけ早く‼

そして、話題となったのが「パーキンソン病霊長類モデルにおけるヒトiPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞の移植の有効性と安全性の確認」というニュースでした。

一番新しい研究成果として挙げられているのが、2017年12月1日に「アドレナリン受容体作動薬がヒトiPS細胞から肝細胞への分化を促進することを発見」とのこと。研究は順調のようですが…。

 

「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)」が抱える問題点とは?


チョッとというか、かなり驚いたのが「京都大学iPS細胞研究所(CiRA)」のホームページの中には、山中教授の「皆様へのメッセージ」が掲載されているのですが、問題はその内容なんです。

内容は、iPS細胞研究所の教職員は、9割以上が非正規雇用であること。それは、2030年までの長期目標を掲げ、iPS細胞技術で多くの患者さんに貢献するべく、日々の研究・支援業務に打ち込んでいくことにマイナスになっているというようなこと。

支援は、長期雇用の財源や、若手研究者の育成、知財の確保・維持の費用などに使うためであるということ。かいつまんで言うと、そんな感じでしょうか

山中教授がマラソンに参加して寄付を募っていたのにも驚きましたが、細胞研究で世界を牽引するような研究をしている職員が非正規雇用とは…ノーベル賞受賞者の方々が危機感を募らせるのも無理ないですね↘↘

ただ、研究に使える資金は確保できているようです。けれど、長期の雇用にまではまわらない。そこで寄付を呼びかけ続けなければならない!というスパイラルになっているようです。

山中教授の精力的な呼びかけの効果もあり、寄付の総額は増え続けているそうです。目標とする寄付金額は年間10億円。2016年の寄付総額は約23億7000万円だったとのこと‼数字の上では大丈夫じゃないの?と思ってしまうのですが。

けれど、さらに研究は発展し、研究者・研究支援者の数も増え続けています。その結果、財源が“常に1割の正規雇用者を確保するのがやっと”という状態に…。

研究者を支える専門職員(研究支援者)は、非正規雇用だと優秀な人が集まりにくいため、やはり教職員の9割が非正規雇用というのは大きな課題だそうです。

現在、「iPS細胞研究基金」の残高は、約70億6000万円。2016年度の基金からの支出は約3億7000万円。さらに、日本を代表する研究所なら、国からも予算がおりるので、2016年度の予算のうち、84%は国などからの「産学連携等研究費」。基金からの支出は4%に過ぎないのです。

では、なぜ正規雇用者数がたった1割なのか?それは、産学連携等研究費のような予算は、期限つきの予算なのです。どんなにお金を出してもらっても、1年〜数年のプロジェクト期間内に使わなければなりません。それでは、長期的な正規雇用者は雇えない…ということになります。

計算上だけですが、年収500〜600万の若手研究者だと、年間約1000万円の人件費がかかると考えられます。一定のままと仮定しても30年、定年まで雇用すると、約3億円‼

正規雇用の研究者や同程度の給与の職員を200人確保するとなれば、30年で約600億円を確保しなければなりません。研究所が期限付き財源だけに頼れないのは、長期的な見通しを立てることが困難だからなのです。

研究というのは、数年で成果が出る性質のものばかりではなく、何世代にも渡って積み重ねられていくものだそうです。山中教授と共同でノーベル賞を受賞したジョン・ガードン氏が『iPS細胞』の基礎になる研究成果を上げて、山中教授がその研究を基に『iPS細胞』の論文を発表するまでには、約40年かかっています‼

何でも使える、そして期限のない財源…それが『寄付』なんですね。使い道が限定されなけば“研究は、さらに加速、発展する”と言われています。もし、研究の過程で、予想外の結果が得られたとしても、その研究プロジェクトの範囲外のものであれば、追加実験をすることは予算内ではできないそうです。

海外、特にアメリカなどで「基金の募集や運用」が一般的なのは、政府による政策に縛られず、安定した研究を継続するためとも言われています。日本がこの分野で世界を牽引し続けるには、現状では寄付をお願いするしかないようです↘↘

この状況を誰よりも理解し、先頭に立って寄付を呼びかけてきたのが、山中教授なのです。ただ、山中教授のノーベル賞受賞があったから寄付が集まっていると言えなくもないようです。当然教授もいつかは退官されるでしょう。“山中コケタラ皆コケタ!”では、シャレにもなりなせん。その後も質の高い研究を維持していくシステム構築こそ「鍵」ですね‼

まとめ

難病に苦しむ人たちからも託される寄付…研究所には「想像を絶する重さ」の責任がのしかかるそうです。私もiPS細胞には期待をしています。一縷の望みを託しています。CiRAはiPS細胞によるパーキンソン病の治療の治験開始を、早ければ2018年としているとのことですが…。

 

「寄付をしてもらう」=「その思いに応え、研究を継続し、成功させなければいけない」ということなのですね。その辺り、私は考えが及びませんでした。

近頃あまり聞かなくなりましたが“科学技術立国”という言葉があるように、科学技術の発展が日本の発展につながってきたことは間違いないのではないでしょうか?

それが土台から崩れてかけているという危機感は、現場で奮闘している研究者がいちばん感じておられるのかもしれません。日本が、ノーベル賞を受賞するような画期的な研究成果を生み出し続けられるのか?岐路にさしかかっているのかもしれません。

また、寄付により目標金額が集まったら、それを運用するという方法も選択肢のひとつとしてチャレンジできるかもしれない…と研究者が語っておられますが、そんな思いをさせる日本って…難病患者として希望が持てないですね。

 

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