1968年設立の任意団体 日本製薬工業協会(JPMA)には研究志向型の製薬企業が72社加盟しています。今、どのような病気に対して、どの製薬会社が、どんな国を販売ターゲットとして研究開発に取り組んでいるのか?その開発段階がどこまで進んでいるのかがHPで分かります。パーキンソン病治療薬の情報を見ては、つい一喜一憂してしまいます。
今までも、各製薬会社が開発、申請中の新薬に関する記事は何度も書いてきました。それを一覧にしてみます。また、iPS細胞治療の2本柱でも取り上げた『創薬』、そして『育薬』に関しても、より詳しく調べていきます。
現在、パーキンソン病の治療のために開発中の新薬は?
●キッセイ薬品工業株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:KDT-3594
*有効成分の承認状況:未承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 第Ⅰ相
*その他:創製品
●久光製薬株式会社…この記事はこちらです。⇒クリック
*治験薬記号(一般名)・および剤型:HP-3000 貼付剤
*有効成分の承認状況:既承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 第Ⅱ相
*その他:
●Meiji Seika ファルマ株式会社…この記事はこちらです。⇒クリック
*治験薬記号(一般名)・および剤型:ME2125(safinamide) 経口
*有効成分の承認状況:未承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 第Ⅱ/Ⅲ相
*その他:導入元 Newron Pharmaceutical社(イタリア)
●エーザイ株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:ME2125(safinamide) 経口
*有効成分の承認状況:未承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 第Ⅱ/Ⅲ相
*その他:導入品(Meiji Seikaファルマ)
●大塚製薬株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:AVP-923
*有効成分の承認状況:既承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病(ジスキネジア)
*開発段階(国内・海外):米国 第Ⅱ相
*その他:
●ファイザー株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:PF-06649751(未定)
*有効成分の承認状況:未承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 第Ⅱ相
*その他:
●大日本住友製薬株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:AD-810N(ゾニサミド)経口剤
*有効成分の承認状況:既承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:レビー小体型認知症に伴うパーキンソンニズム
*開発段階(国内・海外):国内 申請
*その他:
●協和発酵キリン株式会社
*治験薬記号(一般名)・および剤型:KW-6002(イストラデフィリン) …ノウリアスト
*有効成分の承認状況:既承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):国内 販売(私も服用してます) 米国、欧州など 第Ⅱ相
*その他:自社
●田辺三菱製薬株式会社…この記事はこちらです。⇒クリック
*治験薬記号(一般名)・および剤型:ND0612(レボドパ/カルビドパ)
*有効成分の承認状況:未承認
*予定される効能又は効果、対象疾患名および症状名:パーキンソン病
*開発段階(国内・海外):米国・欧州 第Ⅱ相
*その他:自社創製品
今、確認できるのは以上の9品目ですね。何度も書いていますが、薬の選択肢は多い方が良いです。同じ効果・効能が期待できる薬でも、患者によって“合う”、“合わない”があるのです。
『創薬』『育薬』とは?
『創薬』という言葉は、近頃よく耳にするようになりました。
★以前書いた『iPS細胞』の未来は、再生医療と創薬の2本柱。の記事はこちらです。⇒クリック
では、『育薬』とは何なのでしょう?ドラッグ・ラグを取り上げた時にも“薬ができる過程”を説明しましたが、再度まとめます。
日本では、ひとつの薬が誕生するためには、9〜17年もの歳月と、500億とも言われる費用を要するとのこと。その上、開発にそれだけの時間とお金をかけたからといって全部が成功するわけではないそうです!
新薬の開発成功率は、何と約3万分の1とも言われています。3分の1でも大変だなと思いませんか?驚いてしまいました。今、私たちが飲んでいる薬は“奇跡”とも思える確率で世に送り出されたのですね。
❖新薬開発のプロセスと期間
① 基礎研究(2〜3年)
薬の候補となる化合物をつくり、その可能性を調べる研究です。最近ではゲノム情報の活用も進められているとのこと。対象となる新規物質の性状や化学構造を調べ、取捨選択が行われます。
② 非臨床試験(3〜5年)
可能性のある新規物質を対象に、動物や細胞などを使って、薬効や毒性を研究します。
③臨床試験(3〜7年)
非臨床試験を通過した薬の候補(治験薬)が、人にとって有効かつ安全なものかどうかを調べるのが臨床試験(治験)です。
④承認申請と審査(1〜2年)
有効性・安全性・品質が証明された後、厚生労働省に対して承認を得るための申請を行います。
このプロセスは、何度も取り上げています。
❖『育薬』とは?
勉強不足でした。『育薬』というのを初めて知りました。恥ずかしいです。薬は発売された後、使う患者さんは、年齢や性別、体質、病気の症状など条件は様々です。他の薬と併用することも多いでしょう。そういう事例が増えれば増えるほど、開発の段階では予測できなかったことが出現することがあるようです。
例えば、副作用が現れやすくなるケースがわかったり、他の病気への治療効果が発見されたり(これは、パーキンソン病の薬の記事でも取り上げました)、悪いことばかりではなく、予測できなかった良いことも起こる可能性はあるのです。
くすりには、より安全で効果があり、より使いやすいものへと、成長していくという大切な歩みがあり、この誕生後のくすりの道のりを、『育薬』と呼んでいるのです。まさに読んで字の如し!ですね。
◆『育薬』の例です。あ~!あれかって思います。
●口腔内崩壊錠…どこでも服用できます。
水を飲まなくても、だ液によって溶ける「口腔内崩壊錠」。高齢者など飲み込む力が弱い人、私たちパーキンソン患者も嚥下機能が低下しますから助かります。
●貼付剤の登場…効果が長続きします。
身体に貼り、皮膚から毛細血管にゆっくりと吸収させ、くすりの効果を持続させられるようになりました。介護する側も取り扱いが楽ですよね。
●副作用がプラスに転化…アスピリン
1899年、今から100年以上も前に開発された解熱鎮痛薬アスピリンは、長期間服用すると血が止まりにくくなるという副作用があります。この副作用が心筋梗塞や脳梗塞の予防に使えるのではないか?ということで、臨床試験が進められた結果、少容量で血栓の予防効果があることが認められたのです。
『創薬』があっての『育薬』ですが、どちらも大切ですね!次回は『治験』と『臨床試験』について調べてみたいと思います。
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