本当に、このパーキンソン病という病気は色々な問題を抱えているものだと、近頃では感心してしまうほどです。私たちパーキンソン病患者の治療(あくまでも対症療法ですが)は薬物療法です。
ところが治療薬として用いられるドーパミン作動薬によって「ドーパミン調節異常症候群(DDS)」という問題が起こってくることがあるのです。
パーキンソン病は、一生『薬』を飲み続けなければいけません。もしも、薬が切れてしまったら動くことも、食べ物をスムーズに飲み込むことも、話すこともできなくなるでしょう。
ところが、せめて薬さえ飲んでいればパーキンソン病が大人しくしていてくれれば良いのですが、この❝なくてはならない薬❞のせいで様々な問題が生じることもあるのです。レポドパが効きすぎたりするときに起こる体がクネクネするジスキネジアもそのひとつ‼
*ドーパミン調節異常症候群(DDS)とは?
*ドーパミン調節異常症候群(DDS)の詳細は?
*ドーパミン調節異常症候群(DDS)の対応は?
について書いていきます。
『ドパミン調節異常症候群(DDS)』とは?
ドパミン調節異常症候群(Dopamine dysreguration syndrome:DDS)とは、長期間に及ぶパーキンソン病患者へのドーパミン補充療法によっておこる行動障害を指します。
このドパミン調節異常症候群(DDS)のチョッと厄介なところは、患者さん本人が症状を困った!と思うことがあまりないことなのだそうです。ご家族から主治医に相談があって初めて分かる場合が少なくないようです。
DDSの主な症状としては、薬への依存、病的な賭博行為、インターネット依存、買い物依存、性的亢進、過食などといった衝動的で自己抑制困難な行為。そして、特にしなければいけないというわけではない行動、例えば細々としたものの整理、収集などを延々とやりつづけてしまう反復常同行動と呼ばれるものがあります。
上記の行動障害の発生頻度は約6%で、ドーパミンアゴニスト服用者では約13%くらい。パーキンソン病運動障害発現から5~9年で症状が出ている患者さんが多いということは、進行期に現れやすいのでしょうか?
病的な賭博、性欲亢進といった行動障害の背景には脳内報酬系を形成する腹側線条体回路の過活動や側坐核に分布するドーパミンD3受容体の過剰刺激が重視されるとのことです。
一方punding(反復常同行動)の背景として考えられるのは背側線条体回路の感受性亢進。ただ、治療に関しては高いレベルのエビデンスはないようです。
もう少しDDSを詳しく見ていきましょう!
❖病的賭博
家庭や社会活動に支障が出ているにも関わらず、賭博欲求に走ってしまう状態。パーキンソン病に罹患して平均6年程度の若年発症の男性に症状がでやすいようです。発現頻度は3~8%くらい。
❖性欲亢進
病的賭博同様に進行期の若年発症の男性でドーパミンアゴニスト服用患者に多いようです。発現頻度は2~8%くらい。
❖レポドパ依存・乱用
若年男性患者が主治医の指示以上にレポドパを服薬した場合に発現しやすい。薬欲しさに、複数の医療機関を受診するほどになる例は要注意。発現頻度は3.5~4%くらい。
❖買い物依存
これは男女差は無いようですが、患者本人は自分が何故、それを買ったのか説明できないことが多いようです。発現頻度は0.4~4%くらい。
❖過食
この症状も男女差はなく、夜間に症状がでることが多いようです。発現頻度は4%弱くらい。
❖反復常同行動
平均罹患期間約9年、頻度は10%という報告があるようです。機械類の分解や衣類の整理など急ぎでもなく、目的もない行動を反復するため行動が完結することは難しい場合がほとんど。レポドパやドーパミンアゴニストの過量使用で症状がでやすいようです。
理論的には、よく分かるのですが「買い物依存」「ネットサーフィン依存」などは、どこからが❝依存❞で、どこまでが❝趣味❞なのでしょう?他人にお金を借りたり、キャッシングをしてまで❝不必要なもの❞を買ってしまうことでしょうか?
「ネットサーフィン依存」は家の用事も仕事もせずに、ひたすらネット検索を繰り返す…これって、私は一時危なかったかもしれません。物事が途中で止められなかったりもしました。パーキンソン病の薬が過量だったとは思えないのですが…。でも、怖いですね。
「ドーパミン調節異常症候群(DDS)」への対応は?
病的賭博にはドーパミンアゴニストの減量、変更、中止が有効とされています。また、抗うつ剤も効果があったという例が挙げられているそうです。そして家族や介護者の協力も欠かすことのできないものですね。
性欲亢進、過食、買い物依存にはドーパミン補充療法薬の減量、中止、変更に効果が期待されるとのこと。
ただ、反復常同行動に関しては減薬を試みても明らかな効果は期待できないようです。その場合は視床下核脳深部刺激法も治療の選択肢に入れるそうですが、逆に悪化した例の報告もあったようです。
上記のように『精神症状』や『行動症状』は、ドーパミン系に作用する薬物によって誘発されるわけですよね‼ドーパミン運動系に作用するように作られた薬は、情動や気分、行動システムにも影響を及ぼす…ということになります。
過剰摂取と言っても、パーキンソン病に罹患して長期に渡れば何年も抗パーキンソン病薬を服用し続けなければならないのは、私も同様です。パーキンソン病患者は、誰でもDDSを発症する可能性があるということになります。※レポドパ依存は少し違ってきますが。
用量のわずかな増加や新薬の追加などのほんの小さな変化が、症状の出現を引き起こすこともあるそうです。ある意味、私たちパーキンソン病患者には防ぎようがないのかもしれません。根治治療に期待するしかないですが、いつになるやら…。
コメント
大変興味深いお話ありがとうございます。
パーキンソンと診断されているから約1年経ちます。レキップを処方されて、身体の動きがだいぶ改善されましたが、身体が締めつけられる痛みに苦しんでいます。主治医に伝えると、薬が弱いからとメネシットを追加してきました。特に劇的な効果は感じられず、逆に痛みが増した様な気がして
最近は飲んだり飲まなかったりという、あまり良くない飲み方をしています
ここ何日は本当に酷くて、締めつけられる事で胃酸のような上がってきて、頭も圧迫されて、外出もままならない状態です。
主治医は冷たい感じの方なので、次の診察にどうなるのか不安です。
コメントありがとうございます。つたないブログを見てくださり感謝いたします。私のブログの中で一番よく出てくる単語は多分「痛み」かもしれません。ず~っと「痛み」との闘いです。でも勝てるわけもなく…。私の痛みは左足。特に指。第4,5指は糸でくくられているかのようです。痛い、痛いと足を抱えてうずくまるしかありません。パーキンソンとの診断がくだるまでの数年間は左半身の痛みに坐骨神経痛ということで、何本の痛み止めの注射を打ったことでしょう。神経の誤作動に効く訳もなく。ようやく診断がくだってからも、総合病院では診察時間が短く、主治医との意思の疎通が取れず悩みました。現在は、個人の脳神経内科に通ってます。大変な混雑ぶりですが10分は診察時間が設定されていて助かります。先日から神経疼痛の新薬“タリージェ”を試し始めました。薬を飲んだり飲まなかったりは厳しい言い方ですが、絶対にしてはいけません。主治医の診察が定まりません。効いてないんだと、無駄な薬を処方され、またそれも飲んだり飲まなかったりの「負のスパイラル」になります。本当に主治医との相性が悪いのなら医師の変更、転院を考えても構わないと思います。誤解の内容にお願いしますが、そのようなことが無いにこしたことはありません。ただ、自分の身体は自分で守ってあげないと!精神的なことも、薬の効きに影響することもあります。ツラい痛み。少しでも楽になりますように。私も痛みと共に、卓球、ハンドメイドなどしております。
お返事ありがとうございます。膨大な量のパーキンソンの情報の中、とても参考になり身近に感じる事が出来ます。転院等、考えたいところですが田舎故になかなか難しいところです。次回診察まで20日もあるので不安ですが、何とか頑張ってみます。
またよろしくお願いいたします。ありがとうございました!
はい、お互いに厄介な病気になったものです。いつでも、コメントお待ちしています。