パーキンソン病にも有効か?!日本で初めての遺伝子治療薬登場が目前に!

パーキンソンン病の治療の展望

ネット検索をしていると、ふと目に留まったひとつの見出し。日本初の遺伝子治療薬、年内にも誕生へ! アンジェスのHGF治療薬。来年には先駆け2製品もというものでした。2018年8月3日のことです。

ただ、その治療薬はパーキンソン病治療薬ではなく、重症虚血肢(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)を対象としたもの。アンジェス社のHGF遺伝子治療薬ベペルミノゲン ペルプラスミド(注射剤)で、早ければ年内にも承認か!と言われているようです。

以前、書いた記事でも遺伝子医療を取り上げたことがあります。その記事はこちらです。⇒クリック

では、今回の遺伝子治療薬はパーキンソン病と関係ないのでは?と思ってしまいますよね。けれど、このアンジェス社は2010年3月に遺伝子治療薬でパーキンソン病薬の特許が成立しているんです。どんな治療法でも良い!早く確立して欲しい!と願わずにはいられません。


2010年3月にアンジェス社が、
主力の遺伝子治療薬「HGF」について、パーキンソン病治療剤を対象 とする新たな特許が日本で成立した。HGFの適用範囲が広がったと受け取られ、評価が高まっている。という記事が掲載されていました。

この時、アンジェス社から発表された内容は、HGF 遺伝子によるパーキンソン病治療剤を対象とする出願が、特許査定を受けたことを知らせるものでした。(特許 4441263)

また、アンジェス社からパーキンソン病は、中枢神経変性疾患の中ではアルツハイマー病に次いで多い疾患であり、高齢化社会に向け一層の増加が予想されていること。けれど現時点では薬物療法などの対症療法が中心であり、根本的な治療方法が求められていることも書面に書かれています。

そして、本発明は、HGF が有する神経細胞に対する成長促進作用/細胞死抑制作用などに基づき、変
性した神経細胞を修復し、機能を改善するパーキンソン病治療剤に関するものであり、根本的な治
療を可能にするものと期待されます。とも書かれているのです。

その後、パーキンソン病薬の研究が進められているのかは分かりませんが、今回アンジェス社がHGF遺伝子治療薬で再生医療等製品の販売申請を行い、承認される可能性が高いとなれば「パーキンソン病」が、次の対象疾患になることも考えられるのではないでしょうか?あくまでも私の希望的見解ですが…。

HGFとは?

 

何度も出てきている『HGF』。これは、一体どういうものなのでしょう?HGFは、Hepatocyte Growth Factorの略です。って、これでは余計に分からないですよね。『肝細胞増殖因子』というものだそうです。では、肝細胞増殖因子とは何なのか?

肝細胞増殖因子は、臓器の形成や組織の修復に関与する生理活性物質で、肝臓だけでなく心臓・血管・肺・腎臓・消化器・脳神経系・筋肉などさまざまな臓器や組織に作用します。そして、その再生や保護に重要な働きをしていることが知られているとのことです。

その一例として2016年に、難病のALSを対象に肝細胞増殖因子を投与する治験が開始されました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が障害され、脳からの命令が伝わらず、筋力低下する神経変性疾患。

身体の感覚や視力・聴力、内臓機能などは保たれるがゆえにツラい神経難病ですね。パーキンソン病同様に根治療法はなく、対症薬とリハビリテーションが主たる治療法のようです。

肝臓は私たちの身体の中で唯一、その一部が切り取られたとしても再生できる臓器です。この驚くべき再生に関わっているのが『HGF(Hepatocyte Growth Factor)』だと言われています。

発見されたのは、1989年で、大阪大学の中村教授によるものです。HGFは神経細胞に直接作用するだけでなく、神経に近いグリア細胞が弱るのを守る働きもあるそうです。そして治験は2014年にかけて第Ⅱ相が始まったようです。ALSで成功すればパーキンソン病でも成功する可能性ってありそうな気がするのですが…。

 

アンジェス社とは?

 

アンジェス株式会社が製造販売承認申請を行った、『HGF遺伝子治療薬ベペルミノゲン ペルプラスミド(開発コード:AMG0001)について、重症虚血肢を対象とする再生医療等製品であると発表しました。書き出しの部分にもあるように、承認されれば国内では初の遺伝子治療薬の誕生です!※承認された場合の販売は田辺三菱製薬が担当します。

重症虚血肢(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)の症状は?

重症虚血肢の患者さんには糖尿病などの合併症がある場合が多いそうです。糖尿病のために足の潰瘍ができる原因は2つ。一つ目は虚血、つまり血管が詰まって起こる場合。二つ目は、神経障害によって起こる場合。

虚血の場合も膝から下の細い血管が詰まる事が多くなる上に神経障害があるため、傷ができても本人には全く自覚が無く、菌がドンドン入って傷は広がり、免疫力も低下。非常に治療が困難な病気のようです。

バージャ病も発見者の名前から付けられた病名ですね。閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans,略してT.A.O.)とも呼ばれます。四肢の末梢血管に閉塞をきたす疾患で、その結果、四肢や指趾に虚血症状(血液が十分供給されず起こる組織の低酸素症状)が見られる病気です。指定難病です!

患者数は約10,000人。男女比は9:1と男性が圧倒的に多いようです。この病気の原因は、ハッキリとは解明されていませんが、四肢末梢血管の炎症(血管炎)に起因するのではないかと考えられています。

激しい痛み(安静時疼痛)、潰瘍(皮膚の欠損)、ついには壊死に陥ることもあるそうです。この病気の基本的な治療は禁煙!この病気の発症や増悪と喫煙は密接に関係しているのです。

虚血症状に対して最も効果のある治療は血行再建手術(バイパス手術など)で、保存療法で改善が見られない重症の患者さんに行われることもありますが、血行再建手術が可能な症例は全体の20%以下だそうです。そこで遺伝子治療、細胞移植療法などで血管を新生させる新しい治療法に期待が集まっているようです。

アンジェス社は申請したのは、「重症虚血肢」を治療する医薬品。血管を新たに作る遺伝子を含む成分「ベペルミノゲン」を直接足に注射して、足の血流を回復させるというもの。

遺伝子治療薬は、外部から入れた遺伝子を体内で働かせて疾患を治療する薬(欧米や中国では既に実用化されています)です。国が開発を促している再生医療等製品に該当するため、通常1年かかる審査が短縮され、早期に承認の判断が下される。

現在、遺伝子治療薬は、がんやアルツハイマー、重症下肢虚血などの治療を可能とするアンメットメディカルニーズに応える革新的な医薬品として期待されています。※アンメット・メディカル・ニーズとは、いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズのことです。

現状の遺伝子治療は、遺伝子の傷を修復するのではなく、正しく働く正常な遺伝子を付け加えて疾患を治癒することを目的としています。

❖アンジェス社沿革
設立年月日:1999年12月17日

主な事業:遺伝子医薬品の研究開発

●平成11年12月 遺伝子治療薬、核酸医薬及び遺伝子の機能解析を行う研究用試薬の研究開発を目的として、大阪府和泉市に株式会社メドジーンを設立
●平成13年10月 商号をアンジェス エムジー株式会社に変更
●平成13年10月 米国での臨床開発を目的として、メリーランド州にアンジェスインク(連結子会社)設立
●平成14年6月 欧州での臨床開発を目的として、サセックス州にアンジェスユーロリミテッド(連結子会社)を設立
●平成14年7月 治療用及び診断用遺伝子の発見・創薬を目的として、大阪府豊中市にジェノミディア株式会社(連結子会社)を設立
●平成14年9月 東京証券取引所マザーズに上場
●平成16年3月 商号をアンジェス MG株式会社に変更
●平成16年9月 本社及び研究所を大阪府茨木市に移転、ジェノミディア(株)が本社を大阪府茨木市に移転
●平成20年4月 ムコ多糖症VI型治療薬(Naglazyme®)の国内での販売開始
●平成29年7月 商号をアンジェス株式会社に変更
●平成30年1月 HGF遺伝子治療薬 製造販売承認申請

まとめ


今回も直接、パーキンソン病の治療に使用できるものではありませんでした。けれど、何かしらの有効な治療法がアンメット・メディカル・ニーズの突破口を開けてくれる必要は大いにあるのではないでしょうか?

そこから、あらたに治療できる難病が増えてくるはずです。別の病気で使用されていた薬が、他の病気でも効能を発揮するように!期待し過ぎず、諦めず…難しいですね。

 

コメント

  1. 武藤千鶴子 より:

    はじめまして、こんにちは。
    2019年の12月にパーキンソン病との診断が付き投薬治療を始めた者です。58歳です。
    やはり長年、ドクターショッピングしてました。
    パーキンソン病とわかってから、得体の知れない恐怖に苛まれていて、毎日がしんどいです。精神科からの薬も効かない。
    神経内科の医師は心から来ているから大丈夫と言うだけ。
    その様な時をどう乗り越えてこられましたか?
    変な質問でスミマセン

    • コメントありがとうございます。乗り越えられるかと言うと、難しいです。私が今まさに何度目かの波の真っ最中。パーキンソン病の薬を飲みだして8年。落ち着く時期が数か月続くと『ドンッと』落ちます。今がそうなんです。季節的にも同じようなことを言っている患者さんて多いみたいです。ブログにも書いたようにパーキンソン病は気象病。季節の変わり目に幾分か症状が重くなる傾向があるようです。今、冷静そうに打ってますが、不安と痛みで気も狂わんばかりだったそうです。※周りは冷静に見ています。精神状態が安定していないから薬が効かない気がする。効かないのでは?思って飲んでも効果は落ちるような気がします。パーキンソン病は、これからも得体の知れない厄介な病気です。今、苦しい苦しい中、いっそ…と思うことすらあるほどツラい時が。そんな私を支えてくれているのが、家族、友人、そしてこの病気のコミュニティを通して付き合いが始まった友人、仲間たち。今日も実はZOOM会を開いてもらいました。何ということのないお喋りです。でもお互い傷の舐め合いではなく自分のツラさを吐き出しています。この病気、患者によって症状が違います。でも“ツラい”ということは同じ。皆話していると同じように痛くても少しは笑っている自分がいます。皆にとって良い事かは分かりませんが、友の会だったり、PDcafeのようなものだったりとPDに関するコミュニティは増えています。もう入会されているかもしれませんが。大いに利用されてはいかがでしょう!結構皆、頑張っています。肩の荷が少しは減るかもしれません。遅くにゴメンなさい。

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