三カ月ぐらい前…いえ、もう少し前から私は迷走を続けていました。チョッと待って、私の迷走は1年以上前に“後ろ突進?”のように前触れもなく転倒した頃から始まっていたのかもしれません。
それ程ショックなことでした。だって、誰から押されたわけでもなく、何かにかかとが引っ掛かったわけでもないのにトトトッて体が急に後ろに引っ張られるように倒れていくんですよ!最初は何が起こったのか全く分からず呆然となりました。
“転倒?”???って、私が?そんなことが自分の身に起こるのは、まだまだズッと先のことだと思っていたのです。本当に進行性の病気だということを思い知らされる瞬間です。今までにも何度もあったのに…そして、それは案外とヒョコッとやってくるんです。
昨日までできていたことができなかったり、いつもは履けていたスリッパが勝手に逃げていったり(するわけないですけど)、チャンと足を着いているのに体を支え切れなかったり。そうそう、ある日突然両手に物を持った途端固まりました。片手に持ったものをテーブルに置き直すと動けるように。
あぁ、今日から両手にお盆を持ってお茶碗を下げることもできなくなったんだ…と思うと泣けてきました。この頃は何度もテーブルに突進しながら物を置くので、昼頃になると家具の配置が変わってしまってます(笑)
段々と、薬合わせも上手くいかない!進行も止まらない!何でも良いから、誰でも良いから私を助けて!!みたいな思考回路になってました。
そんな時、阪大の望月教授の『集束超音波治療が治験に入った』というニュースが!集束超音波に関しては以前記事にしたことがありました。なかなかパーキンソン病には難しいのでは?と思いつつ、思い切って阪大病院の“セカンドオピニオン外来”というところに治験の希望者はまだ募っているのか?などの質問をしてみました。
随分、無茶なことをしたものだなぁと思いますが、とにかく必死だった(今もですが)のです。すると、数日後治験コーディネーターという方からお電話をいただき、詳しい話しをさせてもらうには主治医の“紹介状”が必要なことなど指示してもらい次の受診日に相談してみることとなりました。
以前書いた超音波地治療に関する記事はこちらです。⇒クリック
今回、説明を受けた治験とは?
本態性振戦の治療に効果があるとされている「MR ガイド下集束超音波治療」(MRgFUS)の治験です。医療機器の臨床検査ですね。
今は行われていないと思うのですが、以前は視床破壊術、淡蒼球破壊術なるものが開頭手術で行われていたとのこと。薬物療法では効果が出なくなった患者さんが対象だったようです。“破壊術”という名の通り、後戻りはできません。
最近では、DBS(脳深部刺激療法)に変わっているのが現状だと思われます。
そんな経緯のある“破壊術”と“刺激法”ですが、今回、治験が始まったのは「MR ガイド下集束超音波治療」です。これは“破壊術”の進化版といったら語弊があるかもしれませんが、分かりやすいのではないかと思います。
“集束”という言葉でイメージするのは、単純に“何かを集めて束ねる”、ですよね。そうなんです。字の通りで集束超音波装置は、太陽の光を一点に集中させて火をつけるほどの熱を
集める虫眼鏡!の原理です。エネルギーを一点に集中させて、直接患部を焼却することができるのです。
MR ガイド下集束超音波治療(MRgFUS)は、集束超音波と MRI の 2 つの技術の結集!画期的な治療法と言われています!何が画期的か!!頭蓋骨に穴を開けたりせずに、MRI画像を見ながら直接身体(パーキンソン病の場合は頭のなかの患部(組織)に超音波を集点することで、被曝もなく治療をおこなうことが可能になったのです
パーキンソン病患者で期待にワクワクした人は少なくないと思うのですが…実は、私もその一人でした。
1024 個の端子が付いたヘルメット型装置が専用ベッドに備え付けられていて、そのヘルメット型装置を私たち患者の頭部に装着!MRI 内に入って行きます。各端子から標的部位に向
けて微弱超音波を照射するというものらしいです。
当然、手術に伴う傷が無いわけですから、直ぐに通常の生活に戻ることができ、服用していた薬も減らせると!何だか良いことづくめのようですが。
セカンドオピニオン外来って何?
私の場合は、治験コーディネーターから連絡が入りました。その電話の中で、治験に参加するには、まず『セカンドオピニオン外来』で、相談をしなければいけないとのこと。そのためには、現在の主治医の“情報提供書(いわゆる紹介状ですね)”が必要であること。
また、セカンドオピニオン外来で話した内容は、主治医に報告されること、あくまでも相談であって、当日検査や治療はもちろん転院、転移のを希望するようなことはできないこと、最後に自由診療なので税込みで33,000円が必要であること(これは、何度も確認されます)などが伝えられます。
エッ!とか思っているうちにコーディネーターの話しは終わり、しばし呆然でした。意を決して、次の診察の際に治験参加のことを主治医に話してみました。反応は、外部の患者の募集(阪大に通院している患者以外での治験参加募集)は無いと思っていたので、とにかく主治医である自分が把握をしたい。コーディネーターに電話をくれるよう伝えて欲しいとのことでした。
そして、また次の診察日に紹介状はでき上がり、セカンドオピニオン外来予約日時も決定しておりました。その話を聞くだけの外来受診にも“同意書”なるものが必要でした。と、その前に予約を取る段階でも主治医の病院の事務から電話でいくつか質問と同意するしないの返答が必要だったと思います。自己責任!てことですね。
さて、治験の内容説明はどのようなものだったでしょうか?!
まず、セカンドオピオン外来予約の1時間前には受付に到着しておかなければなりません。これは患者の資料の中に検査結果、画像などがある場合取り込みに時間がかかるからです。私の場合は、主治医の紹介状だけでしたので、提出物はその紹介状と相談同意書(相談にも同意書がいるの!?って驚きました)のみ。
受付を済ませると、10分前になったらこの場所へ戻ってきてくださいとの指示のあとは、時間待ち。私の立会人は娘だったので、14階のレストランへ。1階は列になっていたので、長くて短い約40分位の空き時間、14階へ上がってみるとスイスイ入れます。阪大の14階はリーガロイヤルホテルのレストラン!
値段は病院の食堂よりも高め…だからか~と思いつつせっかくだし(何が?)“カキフライカレー”を食べました。チャンと魔法のランプみたいな銀色の容器で出されると、何だかリッチな気分。眺めも良いし、私って何しに来たんだっけ?みたいな気分で食べていたら時間ギリギリになってしまいました。のん気だな(;^_^A
いよいよ今回の『集束超音波療法』の医療機器の治験内容が担当の望月教授からありました。1時間をフルに使っていろいろと話ができて、私は33,000円の価値はあったと思います。お金の問題?と言われるかもしれませんが交通費と合わせると、結構な出費です。
まず、結論から言うと「私は、この医療機器を使って集束超音波療法するには向かない。得る物よりリスクが上回る」ということです。
★なぜ、私は『集束超音波療法』に向かないのか。
今回の治験は“片側だけ”なのです。ここが大きなポイントです。私が動かしにくいのは左手。痛みが酷いのは左足、左足先。
例えば、もし私がこの治療をする場合、左が悪いので右側脳で処置を行うそうです。
まずタンパク質が凝固しない50度以下の低温で照射 ⇒ 照射位置を微調整し、1024本の超音波を目的部位に集束させる ⇒ 約60度の温度で神経を少しずつ焼灼。MRI画像を観ながら照射位置を調整できる上、脳深部の温度をリアルタイムでモニタリングが可能。また標的部位が2㎜と極めて微小で精度の高い焼灼が可能。
右側で処置を行うと、利き手である“右手”の動きが悪くなる可能性があるそうです。ところが“左手”は改善がみられる!となれば改善した左手の状態に合わせた薬の量になります。そうしないと左手にジスキネジアなどの不具合がでるからです。エ~ッ!両方とも悪くなっちゃうの??
◎動きにくい、症状が重い方は“利き手側の方”が望ましいのです!!
私がもし左利きで“左側に強く”症状が出ているとします。といことは、右側に処置が施されます。利き腕ではない右側の症状は悪くなるかもしれませんが、利き腕である“左手側”の症状が良くなります。どちらも調子が良くなるのが理想です。パーキンソン病患者の誰もが待ち望んでいます。
◎もうひとつは“頭蓋骨の厚さ”なんです。
骨は超音波を吸収しやすいそうです。頭蓋骨が厚いと言われている“東洋人”は、ズッと『集束超音波の効果が表れにくい』と言われてきました。
検査で問題となってくるのは気体や骨。望月教授から東洋人は頭骸骨が厚い、その上“閉経後の女性”はより厚くなる傾向があるそうです。これは、検査してみないと分からないそうですが、利き手ではない時点で効果は見込めない…と思われるのに検査まで進むのは意味がありません。ここで治験の話しは一旦終わり、そこから別のデバイス(外科手術)治療の話しになりました。
教授曰くは、できれば後戻りができる治療が良いのではないか!とのこと。(エッ!この治験は何?)今、デュオドーパ(胃ろう増設術)は、まだチューブトラブルもあるかもしれないが、将来的には、もっと使いやすくなるのでは?例えばチューブがもう少し柔らかくなるとか、だそうです。
大体、5年くらいで少しずつ使いやすくなっていくよ!とも言われていました。私がズッと気になっていたデュオドーパの普及率の低さにも答えていただきました。ヨーロッパでは保険が適用されていない国があるそうです。となれば、かなり(非常に)裕福でないと治療を続けられません。と言うか手術自体が高額です。500万とも700万とも言われています。真偽のほどは分かりませんが。
とまぁ、一時間をフルに使い色々と話しを聞くことができて、治験参加は諦めざるを得ませんでしたが、得るものは大きかったように思います。簡単に治験に参加する!とか、少しでも楽になれば!と考えていた自分が恥ずかしいです。
そして、33,000円を支払い終了。セカンドオピニオン外来と一口に言ってもいろんな目的の患者が、“何とかして欲しい”という一つの願いを握りしめるように来る所かもしれません。
まとめ
治験に安全なものはないと頭で分かっていても、自分の体調が悪い時には冷静な判断すらできなくなります。どんな危険な目に遭おうとも何とかして欲しい!と、思ってしますのです。今回、“不適合!”と、ハッキリと言われ落ち着きました。
冷静になると、またフツフツと最初に胃カメラを試した人って…、とか初めてバリウムを飲んだ人って…などというバカなことを考えてしまう私です。けれど、今当然のようにあるその医療機器、薬は必ず誰かが最初に“命がけ”で試してくれているのです。本当にありがたいです。そして、一日も早い改善薬、治療法が見つかりますように!と祈りつつ。
コメント
いつも共感しながら読んでいます。
セカンドオピニオン外来。
治験も含めて、私も興味ありありです。
2017年9月の右足歩行困難からの発症以来、2箇所の総合病院脳神経内科の受診と、都内有名大学病院に19日間検査入院を経ても確定診断に至らず、エルドバ効果無い事や、PDに当てはまらない症状がある事から、CBD等の何らかの神経変性疾患だが、病名は確定診断に至らず。
電車通勤できず仕事も辞めてしまい、不安と絶望で、どんどん進行する症状に怯えていました。
それが、去年(2019年)11月、心筋シンチ検査の結果、あっさりと『パーキンソン病』ですねって?!
今までの月日は何?っていう感じです。
しかし、数あるパーキンソン病の薬が効きません。オンって何?ほとんどオフだけです。ひざから下が重だるくて、固まってます。ここ数ヶ月は心筋シンチ検査を行っていなかった主治医への不信感や、メンタルも弱ってて、かなり、辛い状態。
県の難病支援センターにも相談したところ
他の病院のセカンドオピニオン外来を勧められました。
料金は、同じです。
しかし、なかなか出かけるモチベーション
に至らずでした。
でも、私も行ってみます。
患者力つけて、用意周到にして。
順天堂大学病院に行ってみるつもりです。
まずは明後日、今の主治医に相談してみます。勇気を持って。
自分の体の事なので、遠慮しないで。
自分を鼓舞して、同行の夫にも協力してもらいますね。
お互い厄介な病気になったものです。私は突進が酷くなりました。結局は、ハルロピも止め元に戻しましたが突進、すくみ足…。朝の家具の配置と午後の配置では、私がぶつかったところが微妙に変わっています(笑)ダイニングテーブルなんて大変な目に遭ってると思います。そこで、コムタンが悪さをしていないか確認するためにスタレボを休薬しマドパーに変更です。どう薬を飲んで良いのか分からなくなってきました。セカンドオピニオン外来頑張って行ってきてくださいね!!私の場合立会人は偶然同じ病院に勤めている娘でした。一日も早く治療法が開発されることを祈るしかありません。
この度は大変貴重な体験をシェアして頂きありがとうございます。
いつも知らなかった事を沢山読ませて頂いて感謝おります。
私は字が書きづらくて受診した心療内科の先生がパーキンソンだと診断してくれて、そこに通院して6年目になります。その先生は神経内科と精神科もやっています。話もゆっくり聴いてくれますし、相性もいいです。
今はメネシットが一日4錠処方されています。
本を読むと後々の為にメネシットは少ない方がいいと書かれています。
最近私の状態が薬の切れる時間が早くなってきたのが気になって相談したところ、他の薬を使うつもりがないようです。
このまま個人病院に通うか、県立病院に代わるか悩んでいます。
年賀状にパーキンソンになったと書いたところ、友達からK大のS先生がいいよと連絡をもらいました。行きたいのは山々ですが、私の住んでいる所は北の果てのA市です。
長く通うのは無理です。
著名な病院に通えることは地方に住む人のあこがれです。
患者力を書いてくださったブログを読んで、パーキンソン友の会に入会しました。
これから先輩方にいろいろ体験談をお聞きして、私も進歩していきたいと思っています。
コメントありがとうございます。最近、友の会兵庫県支部のブログも担当し、仕事を辞めてから模索していた家での仕事も徐々に軌道に乗り始めました。ただこの病気には波があります。今イヤ~な波の真っただ中。そんな中で救いになるのが友の会の友人やその友人を通じ知り合った方々。そんな繋がりが無ければ、私なんてとっくに潰れちゃってます。さて、う~ん。病院選びは悩みますね。私は最初、総合病院で治療を受けました。東大医学部卒のアルツハイマーではチョッと有名人。けれど、何か体調に変化があってもよほどのこと(入院を余儀なくされているとか)が無い限りは、次の予約の日までに別の予約日も取ってもらえるなんて事はまず考えられません。大学病院や都道府県のセンター医療施設になっているような病院…確かに命に係わる大手術をするとか短期で退院を目指す病気の場合は安心かもしれませんね。パーキンソン病の場合は何とも難しいです。その先生の良し悪し以前に1人の患者にかけることのできる時間は決まっているようなものです。言葉は悪いですが“さばかなければ”なりません。あくまでも私の場合ですが、個人病院でユックリと診てもらいながら、何かあれば主治医に紹介状を書いてもらうケースが安心だな、と感じています。それからメネシットですがマドパーなどと並ぶ代表的なレポドパ(L‐ドーパ)です。あまりほんの情報に振り回されないでください。そのお薬の上限があるはずです。自分が服用している量がその上限よりもかなり少なければ、今あまり心配されることはないのでは?と思います。コメントはとても励みになります。また、お願いいたします。
お返事ありがとうございます。
アドバイスいただき心強いです。
これからもよろしくお願いいたします。
2008年に足の細かな震えほんの数分に気づいていました。
5件病院を回りました。心臓シンチでも問題ありませんでした。4件目は検査入院しました。せき髄液まで採取して検査しましたが異常ありませんでした。でも私の症状がパーキンソン病とそっくりなのでパーキンソン病症候群と診断されました。そのご5件目の病院でスペクト検査の結果パーキンソン病ヤール3と診断されたのが6年前です。
私は進行が速いのかレボドパ配合剤のECドパールをすでに一日量目一杯の6錠のんでいます。それも起床時から夕食前までの間にです。ですから夜間10時を過ぎると動けなくなるので9時半に就寝しなくてはなりません。でも長くて3時間しかねむれず