パーキンソン病患者の苦しみは『iPS細胞』でどこまで改善されるのか?シンポジウムに参加して(最終編)

パーキンソンン病の治療の展望

今回は、神戸新聞創刊120周年記念 神戸新聞s情報文化懇話会 共催シンポジウムに幸運にも参加申し込みの抽選枠に入ることができました。『iPS細胞』の未来は、私たちのような治療法の見つかっていない進行性の難病の罹患者の未来に繋がっていると信じ、心躍らせながら講演会へと向かいました。

結果としては、まだまだパーキンソン病の根治治療への道は遥か彼方だということが分かった…というものでしたが、逆によくぞここまでとも言えますよね!なにせ研究者たちが日夜闘っているのは“人間の脳の中の小さな小さな細胞”なのですから。

最近では脳梗塞も早期発見早期治療だと、元のように職場復帰されている方もいますよね。それと、シンポジウムに参加してから“薬”のありがたさが、前にも増して身に滲みます。パーキンソン病の薬だけではなくて、例えば“痛み止め”!頭痛、生理痛、傷の痛み、お腹の痛みだけに効く薬もあります。

今、私たちは病院で処方してもらったり、ドラッグストアで購入したり。家に、いざ!という時のために解熱鎮痛剤を置いておられる方も多いのではないでしょうか?何気なく飲んでいましたが、キッと初めて創るのは大変だったのでは?と思いを馳せてしまいます。

『iPS細胞』を使った、今回のパーキンソン病 治験の目的は?(前回の記事で触れた部分有り)

● パーキンソン病患者を対象に、ヒトiPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞を大脳基底核の主要な構成要素の一つ線条体(被殻部分)に移植することによる安全性及び有効性の評価。

●パーキンソン病患者を対象に、ヒトiPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞を線条体に移植した被験者に対するタクロリムス(拒絶反応を抑制するための免疫抑制剤)の安全性及び有効性の評価。

細胞移植の方法についても前回の記事にあるように、iPS細胞から分化誘導した約500万個のドーパミン神経前駆細胞を、手術によって頭部に穴を開けた、患者さんの脳の線条体部分(左右両側)に移植します。

今回の治験は、まず「ヒトiPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞」を線条体に移植してみて、その後2年経過しても安全かどうかを確認する!というのが目的。まさに再生医療の第一歩ですね。

つい患者である私は、早く!と焦ってしまいますが、この積み重ねがあってこそ、数十年経ったときに誰もが安心して受けられる治療になるのでしょう。

今回実用化に向けて「ヒトiPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞」を使いましたが、2014年には滲出型加齢黄斑変性の患者に、患者自身のiPS細胞由来の網膜色素上皮(RPE)細胞のシートを移植する手術をが行なわれました。これは衝撃的でした!本当にできるんだ!!

次の講演は、上記の手術に深く関係する理化学研究所生命機能センターの万代道子さんです。

理化学研究所とは?

理化学研究所(英語名:RIKEN)はよく耳にするけれど、実際どのような研究が行われているのか、いつ頃からあるのかも知りませんでした。理化学研究所の研究分野は広く、物理学、工学、化学、数理・情報科学、計算科学、生物学、医科学などに及び、日本で唯一の自然科学の総合研究所としての役目を果たしているそうです。

創設は、1917年(大正6年)に財団法人として、戦後は、株式会社科学研究所、特殊法人時代を経て、2003年(平成15年)に文部科学省所轄の独立行政法人理化学研究所として再発足。2015年(平成27年)には国立研究開発法人理化学研究所に。

◆創設当時の沿革には渋沢栄一、桜井錠二、大隈重信など層々たるメンバーが名前を連ねています。

そして、講演のマイクの前に立たれた万代さんは、私が持っていた女性研究者(かなり偏ってました…)とは、全く違うホンワカとした女性。

理化学研究所生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト 副プロジェクトリーダー(名刺に入りきるだろうか?)という重責をこの笑顔で乗り切ってこられたのでしょうか?3人のお子さんのお母様でもいらっしゃいます。

加齢黄斑変性とは?

眼に入った光は水晶体を通り網膜へ。網膜は目の中ではフィルムですね!その中心部分に小さなくぼみがあって、それが『黄斑』なのです。

加齢黄斑変性は「滲出型」と「萎縮型」の2種類です。どちらにせよ、この病気で大切なのは早期発見・早期治療、歳のせいと思って放っておくと重症化する例も!

この病気の代表的な症状が“視野の中心の歪み”です。いつもの道や階段が波打って見える…という感じだそうです。そして進行してくると“中心部が暗くなる”というのは想像以上のツラさですよね!

加齢黄斑変性の検査は病院の機械を使ってしますが、自分でもできるみたいです。方法としては“アムスラーチャート”という方眼紙の様なチャートを片目ずつで見て視野が歪んでいないか、中心が黒く見えないかをチェック!※アムスラーチャートが無ければ、障子や碁盤(とにかく格子状)などで代用可能!

今のところ治療方法は滲出型の場合、通常「抗VEGF薬」を眼に直接注射します。この注射が聞かない場合は、光線力学的療法や光凝固という方法がとられるそうです。萎縮型の場合は、現在のところ治療法はないそうです。何となくパーキンソン病に似てますね。この病気の患者さんたちも再生医療の成功を心から願ておられることでしょう。

 

医学的な研究と言っても、研究員が皆医師ではないのです!

 

『iPS細胞を用いた進行性骨化性繊維異形成症の創薬研究』という題で講演をされる京都大学iPS細胞研究所の池谷 真准教授は理学部卒業です。山中教授は研究所にはむしろ医師の方が少なくて、薬学部、理学部などの研究員が日々開発に取り組んでいるとのことです。 

進行性骨化性繊維異形成症(FOP)は、何んと200万人に一人という極めて希な疾患で、日本でも患者数は80名と推定されています。症状は幼少期から始まり、まず背部の骨格筋や腱のような部位に骨組織が出現し、徐々に四肢に広がっていくというもの。

2006年にこの疾患の原因までは分かったそうですが、有効な治療方法は見つからないまま…。CiRAの戸口田淳也教授と池谷真准教授のグループは、大日本住友製薬株式会社との共同研究によって、まずFOPの患者さんからiPS細胞を樹立⇒培養皿の中で病気を再現⇒異所性骨化発生の引き金となる物質と同じ物質を発見。

既に他の疾患の治療薬として日本においても使用されている薬剤が、異所性骨化を抑制することを確認し報告したとのことです。

ということは、パーキンソン病にもその可能性があるということですよね!今は、全く違う病気の薬として使われているものが、パーキンソン病の進行を止めてくれる薬だったりするようなことが!実際今、抗パーキンソン病薬として承認されている薬の中にもそういったものはあります。

ただ、偶然の産物ではなくiPS細胞を使って、調べていけばたどり着く時間が確実に早くなります。期待してしまいますね!

 

まとめ

以前の記事にも書きましたが、日本人の理科離れ、若い研究者が自分の研究に集中できない。もう日本からは理科系のノーベル賞受賞者はでないかもしれないと、今までにノーベル賞を受賞した方が嘆いておられました。

けれど、みごと本庶佑(ほんじょう たすく) 高等研究院副院長・特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。ヤッパリ嬉しいですよね。こういったニュースや授賞式などはメディアで流し、今の若い世代の人達が憧れて後に続いてくれたら、と願います。

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